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第1回論述 解答例/解説【問題③】

○【問題】

メソポタミアの歴史と文化の特徴を、エジプトの場合と比較しながら、以下の語句を用いて400字以内で説明しなさい。

統一国家 アッカド人 ナイル川の氾濫 都市国家 太陽暦

シュメール人 六十進法 メネス王 農耕社会 天然の要害

 

○【解答例】

 エジプトでは周囲の砂漠が天然の要害となり閉鎖的な地形をつくりだし、王朝は長期間存続した。メソポタミアはその開放的な地形のため多くの民族が侵入し王朝交代が頻繁であった。エジプトはナイル川の氾濫メソポタミアはティグリス・ユーフラテス川の氾濫で肥沃な土壌を有し農耕社会が生まれた。その際、大規模な治水や灌漑を行う必要性から王は強大な権力を持った。しかし、エジプトでは前3000年頃にメネス王統一国家を形成したのに対し、メソポタミアではシュメール人都市国家が分立して抗争したため、アッカドによるまで統一はなされなかった。文化面ではエジプトでは神聖文字が使用され、河川の氾濫を予測するため太陽暦が生まれ、死者の書に見られるように来世的志向が強かった。メソポタミアでは楔形文字が使用され、太陰暦が生まれた。また占星術で運命を占うなど現世的志向が強かった。またメソポタミアでは六十進法が用いられ数学も発達した。

 

○【分析】

主題:メソポタミアの歴史と文化の特徴を説明する(400字以内)

条件:エジプトの歴史と文化の特徴と比較する

条件②:指定語句を使う

→地域設定はメソポタミアとエジプトでよい。時代設定に少し困るが、メソポタミアについてなので、文明の成立から始めると考えればよいだろう。終わりについての指定はないが、指定語句にアッカド人とあるので、少なくともアッカド人についてまでは書く必要があることはわかる。

 

○【ポイント/調整など】

あくまでメソポタミアの特徴説明なので、メソポタミアが主役に見える書き方を心がけたい。日本語では主役を後に記述することが多い。

比較なので、比較する軸を指定語句を手がかりにして表のようにして書き出すと良い。比較を表記する場合には、比較軸を並列させるのがマナーである。 

<エジ>             

ナイル川の氾濫   ②早くから統一国家  ③天然の要害(砂漠に囲まれた閉鎖的地形) ④太陽歴

<メソポ>

①ティグリス・ユーフラテス ②シュメール人都市国家・バラバラ・アッカド人により統一 ③開放的地形 ④太陰暦 ⑤六十進法

 

ここから実力が試される部分。

統一国家都市国家の使い方>

単にエジプトを統一国家メソポタミア都市国家と表記するだけでなく、前3000年頃にはエジプトは統一国家だったが、メソポタミアはまだバラバラであったという視点を持てるか。この視点を持てばアッカド人が指定語句に入れられた意図が読み取れる。ここまで余裕のある受験生は少ないかも?

<農耕社会の使い方>

農耕社会は共通点として使うことも可能である。「大規模な治水と灌漑を行う農耕社会が成立し、その必要性から王が強大な権力をもち神権政治を行った。」という共通点。相違点に部があるが、共通点も「特徴」の一つたり得ることは覚えておこう。

相違点として用いる場合は、開放的地形からメソポタミアは交易が盛んであったという推測を行い、エジプトは農耕主体、メソポタミアは交易も盛んという表現も可能である。ただし、ここまでとっさに思いつくのはかなりの力がいる。また、別にエジプトでは交易が行われなかったわけではないし。と思えば、共通点として回収すればいい。

<六十進法のペア>

十進法がその答えとなるが、もし見つからない場合はメソポタミアでは六十進法が使われたと書くだけに留めるのも手である。論述問題では指定語句の回収方法と逃げ方も重要なスキルである。

<その他の比較軸>

指定語句にだけ頼ってはいけない。自分で比較軸を見つけることも大切である。

エジプトはミイラや死者の書など、来世的志向の強い文化をもち、メソポタミア占星術などの現世的志向の強い文化をもった。これも比較軸である。

パピルスに神聖文字を書いたエジプト、粘土板に楔形文字を書いたメソポタミア。これも軸になる。

エジプトの王は現人神・神の子(ラーの子)、メソポタミアは神の代理人・最高の神官である。

 

<感想>

論述一個でここまで考えないといけないのか?と思うかもしれないが、ここまで考えられるのが論述問題のいいところである。センター試験の勉強をする際にも深く考える力がつけば、表面上の知識など余裕で内面化できる。