振り返り用のページ

世界史の振り返りのためのものです。

論述講座 第8回 No.12/宿題No.8(ラスト)

8回お疲れ様でした。これ以降はしばらくの間、知識不足を補う+センター試験の勉強(大前提ですね)を頑張ってください。

ただ、完全に論述から離れてしまうのも、もったいないので、週に2問程度は練習し続けてもいいと思います。

 

3 2010年阪大

【問題】

日本語を万葉仮名(実は漢字)やローマ字(アルファベット)で書くこともできるように、文字(表音・表意)と言語は必ずしも一致しない。世界史上における文字の歴史について、いわゆる四大文明における文字の発生から現代までの流れを、おおまかに述べなさい。その際、現代世界で多くの人々が使用している、以下A〜Eの記号を用いて解答すること。なお、それぞれの文字の名称は必ずしも正確に答えなくてもよい(300字)。 文字の写真は掲載不可。

 

【分析】

主題:文字の歴史について、四大文明における文字の発生から、現代までの流れをおおまかに述べる。

条件1:指定された5系統の文字の、起源・伝播に重点を置いて述べる。

条件2:A〜Eの記号を用いて解答する。

→A系統の文字の起源は・・・  B系統はこうして伝播した・・・ といったイメージ

条件3:A〜Eの文字の名称は正確に答える必要はない。

 

【見通し/ポイント】KP17/119 ・ 資料集P11など 

○それぞれの文字の確認(条件3から、ある程度の予測でいい。)

・A:アルファベット(ローマ字)系統 

・B:ロシア文字系統(写真の肖像画レーニン。これに気付けるかが大きい)

・C:アラビア文字系統(写真にモスクが載っている) 

・D:インドの文字(写真にガンディーが載っている。ブラフミー文字という)

・E:漢字系統(これはさすがに、見たらわかる。)

○主題と条件1より:四大文明で、それぞれ文字が発生したところから、起源・伝播までを整理する。

 

四大文明の文字

メソポタミア文明では楔形文字

エジプト文明ではエジプト文字(エジプト神聖文字・エジプト象形文字

インダス文明ではインダス文字

黄河文明では甲骨文字

 

○それぞれの伝播・発展について

楔形文字インダス文字は継承されなかった。

・エジプトの神聖文字は、フェニキア文字に発展した。

 ・【西方】フェニキア文字からギリシア文字が生まれ、世界で広く使われているA系統の文字と、ロシアや東欧で使われるB系統の文字になった。

 ・【東方】フェニキア文字からアラム文字が生まれ、イスラーム世界で広く使われるC系統、ソグド文字やウイグル文字になった。

・インドのインダス文字は継承されなかったが、ブラーフミー文字が発明され、D系統の文字に発展し、インドや東南アジアに普及し、さらにチベット文字パスパ文字につながった。

・中国の甲骨文字はE系統の漢字へと発展した。漢字は東アジアに広まり、西夏文字契丹文字や日本の仮名文字につながった。

 

【解答例】

メソポタミア楔形文字は継承されなかった。エジプトの神聖文字は、フェニキア文字に発展し、フェニキア文字からギリシア文字が生まれ、世界で広く使われているA系統の文字と、ロシアや東欧で使われるB系統の文字になった。またフェニキア文字からはアラム文字も派生し、イスラーム世界で広く使われるC系統や、ソグド文字やウイグル文字になった。インドのインダス文字は継承されなかったが、ブラーフミー文字が発明されD系統の文字に発展し、インドや東南アジアに普及し、さらにチベット文字パスパ文字につながった。中国の甲骨文字はE系統の漢字へと発展した。漢字は東アジアに広まり、西夏文字契丹文字や日本の仮名文字につながった。

 

【雑感】

○文字については、これまで何度も問われ、また問われたという感じがする。しかし、出題されている以上は知っておくべきなので、しっかり勉強しよう。教科書P119に文字特集がある。

○ある程度は知っているだろうが、細かい枝情報を書けるかで、300字を埋めることができるかが決まる。

○何を問われているのかを分析できただろうか。四大文明の文字の発生についてを飛ばしてしまっていないだろうか。四大文明からスタートさせる必要がある。したがって、継承されなかった文字についての記述も要する。

○一番難しいのは、ブラーフミー文字だろう。アラム文字からD系統とする意見もあるが、資料集等を見ると「?」となっていて確証がもてない。そこで、現実的な回避策として、いきなりD系統に登場してもらってもいいかもしれない。実際の試験でもブラーフミー文字は難しいと思われる。

○チュノム(ベトナム 陳朝)についてだが、リード文に「現代世界で多くの人々が使用している」という言葉があるので、地域と時代に限定のあるチュノムについては外した。

  

【問題】

「太陽の沈まぬ国」として16世紀に全盛期を迎えたスペインは、無敵艦隊の敗北以降、ヨーロッパ国際政治のなかで衰退していく。17世紀から19世紀末までの衰退の経緯を述べなさい。(200字程度)

【分析】KP162/170/172/177/191/237

17から19世紀末までのスペインの衰退について述べる。

条件:時代設定として、無敵艦隊の敗北以降から19世紀末まで

→リード文に登場しているため、無敵艦隊アルマダ海戦)については書いてもポイントにならない。

条件2:リード文より、ヨーロッパの国際政治に着目する。

 

【見通し・ポイント】

 

17・18・19をそれぞれ60字程度で分割して考える。

〇17世紀

①オランダの独立:商工業が発展していたオランダが独立したことで、経済的打撃を受け、衰退の一因となった。(42字)

 

〇18世紀

スペイン継承戦争後の条約でブルボン朝が成立した際、スペイン領ネーデルラントや海外領地など、多くの領土を失った。(55字)

※スペイン領ネーデルラントはラシュタット条約で、オーストリア領となったため、あえてユトレヒト条約とは書かなかった。ユトレヒト条約スペイン継承戦争後に諸国間で結ばれた条約の総称です。この時、ジブラルタル・ミノルカ島もイギリスに割譲している。

 

〇19世紀

①ナポレオンが率いるフランスに服属し、その混乱でラテンアメリカ植民地の独立が相次いだ。(42字)

②19世紀末の米西戦争で、フィリピン・グアム・プエルトリコアメリカに奪われ、キューバも独立し、海外植民地の大半を失った。(60字)

 

【解答例】

17世紀に経済先進地であったオランダやポルトガルが独立し、経済的打撃を受け衰退の一因となった。18世紀のスペイン継承戦争ブルボン朝が成立したが、スペイン領ネーデルラントジブラルタル、ミノルカなどを失った。19世紀にはナポレオンの支配を受け、その混乱でラテンアメリカ植民地の独立が相次いだ。さらに19世紀末の米西戦争では、フィリピン・グアム・プエルトリコアメリカに奪われ、キューバも独立し、海外植民地の大半を失った。(206字)

 

【雑感】

問題の要求は、いたって素直である。スペインの衰退と聞いて、どれだけキーワードを見つけられるかがポイント。

教科書の記述は、衰退する側ではなく、これから盛り上がっていく側の視点から描いていることが多いので、視点を逆転できているかが重要であろう。

 

【問題】

現代の世界は、国境を越えて人・もの・カネ・情報が行きかうなかで世界の一体化が進み、地球規模での相互依存社会が急速な勢いで姿をあらわしつつある。しかし、最近の歴史学の見方によれば、グローバル化と呼ばれているこのような現象は、程度や構造に差があるものの、現代にはじめて起こったわけではなく、世界史上いくつも先例がある。グローバル化がどのように進んだかについて、19世紀~20世紀初頭のどちらか一方の時期を選んで、次のことがらに留意しながら述べなさい。(300字程度。)

(1)グローバル化を先導した主要な勢力と主要な進出先の変化。

(2)アジアの諸国家と交易ネットワークなど非ヨーロッパ世界の動き、それらとヨーロッパ勢力との関係。

(3)グローバル化を先導した技術や人の動き。

 

【分析】KP183/196/218/223/232~233/235~236/245

主題:19~20世紀初頭に、グローバル化がどのように進んだかについて述べる。

条件:3つの点に留意しながら述べる。

条件:リード文にある、「人・もの・カネ・情報」については、(3)で具体化できるだろう。

※300字だからといって、大量に具体例を入れられるとは限らない。入れられる場合もあれば、そうでない場合もあるので、そこは見通し段階である程度、目安を持っておこう。

 

【見通し】

(1)~(3)があるので、それぞれ100字程度と考えてみる。

〇19~20世紀初頭という時代設定がある。この時代を聞けば、まずは帝国主義の時代直前から帝国主義の時代に突入するあたりだと思いつきたい。こういった時代感覚は非常に重要である。

 

帝国主義直前まで>

イギリスの中国・インド進出に代表される。

産業革命後の資本主義諸国が、市場と原料供給地を求めてアジアに進出した。

帝国主義時代>

アメリカ・ドイツのラテンアメリカ・アフリカ進出に代表される。1870年代ころから帝国主義政策が強化されていく。

→その理由としては、第二次産業革命の分野である、重化学工業・石油工業は巨大な設備投資を必要としていたため、少数の巨大企業が市場を支配する独占資本主義が生まれ、この独占資本が資本投下先として、アジア、アフリカやラテンアメリカへの進出を強く求めたことがあげられる。

 

(1)グローバル化を先導した主要な勢力と主要な進出先の変化。

グローバル化を先導した主要な勢力の変化

 ・イギリス=産業革命を最初になした(第一次産業革命)

 ・アメリカ・ドイツ=イギリスに続いて産業革命をなした(第二次産業革命)

→イギリス・フランス・ロシアが進出していないかといえば、そんなことはないので、独占資本主義と資本投下を主体に述べると正確さを確保できる。

 

〇主要な進出先の変化

 ・イギリス→中国・インド(アヘン戦争イギリス領インド帝国の形成が代表的 19世紀に当てはまる)。これにロシアやフランスも続いた。

 ・アメリカ・ドイツ:アジア・ラテンアメリカ・アフリカ・(太平洋地域:知識に不安があれば踏み込まない方がいいかも)

 

(2)アジアの諸国家と交易ネットワークなど非ヨーロッパ世界の動き、それらとヨーロッパ勢力との関係

〇アジア・ヨーロッパどちらの視点から書いても問題ない

・伝統産業が破壊された:インドの綿織物とイギリスの機械製の綿織物の、輸出入額が逆転したということが例。

・植民地化が強化された。

・民族や宗教を基盤に団結をはかり抵抗運動を展開した。

・知識人を主体にした近代化運動が展開された。

 

(3)グローバル化を先導した技術や人の動き

グローバル化を先導した技術:交通(蒸気船)・通信技術の発達。

グローバル化を先導した人:移民(アジア・ヨーロッパから、南北アメリカへが代表的。)

帝国主義直前までは、華僑や印僑が多い。

→19世紀イギリスの自由主義改革の流れで、奴隷制が廃止された。その代替として、アジアの安い労働力が重視された。

アメリカへの移民

・1870年代:ドイツ、アイルランドからの移民

1880年代:イタリア、東欧からの移民 ユダヤ系も多い

 

【解答例】

産業革命を最初になしたイギリスは、その工業力を背景に19世紀前半には、市場と原料供給地を求めて海外植民地を拡大した。イギリスはインドを植民地化し、清朝を開国させた。19世紀後半には、独占資本が資本投下先として海外進出を進める帝国主義の時代に入り、特にドイツやアメリカが台頭した。各国はアフリカ、ラテンアメリカ、太平洋地域にも進出して植民地分割を進めた。アジア諸国では伝統産業破壊と植民地支配強化に対し、民族や宗教を基盤にした抵抗運動や、知識人を主体とする近代化運動がおきた。一方交通、通信技術の発達は世界の一体化をより緊密にし、アジアやヨーロッパから、南北アメリカ、アフリカへの移民も増大し、グローバル化が一層進んだ。(307字)

 

【雑感】

書くことのできる知識は多くあるので、どれを書くべきか悩んでしまう。どうすれば論がストレートになるのかを考えて取捨選択していくべきだろう。案外枝情報を各スペースは少ないという印象である。

明らかに世界システム論を基盤にした出題である。教科書198/245を読んでいれば、ある程度書ける。何度も繰り返すが、必ず「一体化する世界」の特集ページ(目次で緑に塗られている部分)は読んでおくこと。これを読まずして試験に臨むのはもったいなすぎる。

 

 

【短答シリーズ】

問1:(イ)イリ地方 (ロ)チベット仏教

問3:ミッレト(制)